人工授精を検討する夫婦へ。知っておくべき感染症リスクと注意点
「人工授精って、感染症の心配はないのかな?」
「安全に治療を進めるために、どんなことに注意すればいいんだろう?」
不妊治療の一つである人工授精は、精子を直接子宮内に注入することで、妊娠の可能性を高める治療法です。体外受精よりも身体的・経済的な負担が少ないことから、多くのご夫婦が選択されます。
しかし、人工授精は体内に精子を注入するため、感染症のリスクがまったくないわけではありません。安全に、そして安心して治療を進めるために、事前に知っておくべき感染症リスクとその対策について解説します。
人工授精で注意すべき主な感染症リスク
人工授精で懸念される感染症は、主に精液を介して感染する可能性のある病気です。
1. 性感染症(STI)
性器クラミジアや淋菌、梅毒、HIV、B型肝炎、C型肝炎など、性行為を介して感染する病気です。これらの病気は、精子だけでなく精液中にも病原体が含まれている場合があります。
リスク: 感染している精液を子宮内に注入すると、子宮内膜炎や卵管炎を引き起こし、さらなる不妊の原因になったり、母子感染のリスクがあったりします。
2. 細菌性膣炎や子宮内膜炎
人工授精の際に、膣や子宮頸部に常在する細菌が子宮内へ持ち込まれ、子宮内膜炎を引き起こす可能性があります。
リスク: 子宮内膜炎は着床を妨げる原因となり、人工授精の成功率を下げる可能性があります。
感染症リスクを避けるための3つの対策
感染症のリスクを最小限に抑え、安全に人工授精を行うためには、以下の対策が重要です。
1. 事前の感染症検査は必須
人工授精を始める前に、ご夫婦で性感染症の検査を受けることが非常に大切です。
検査項目: 医療機関によって異なりますが、一般的にはHIV、B型肝炎、C型肝炎、梅毒、クラミジア、淋菌などの検査が行われます。
目的: 感染の有無を確認し、もし感染が判明した場合は、人工授精を行う前に治療を完了させます。
2. 精子の洗浄・濃縮処理を適切に行う
人工授精では、精液から運動性の高い精子だけを取り出し、不純物や感染症の原因となる病原体を除去する**「精子洗浄・濃縮」**という作業が不可欠です。
目的: この工程は、精液中の病原体を可能な限り排除し、子宮内への細菌の持ち込みを防ぐために行われます。
3. 医療機関の衛生管理体制を確認する
治療を受けるクリニックや病院が、衛生管理を徹底しているかを確認することも重要です。
確認ポイント: 器具の滅菌消毒が適切に行われているか、治療室が清潔に保たれているかなど、安心して治療を受けられる環境であるかをチェックしましょう。
まとめ:感染症対策は、安心と成功のための大切なステップ
人工授精は、安全性が確立された治療法ですが、感染症リスクを完全にゼロにすることはできません。
だからこそ、事前の感染症検査や、クリニックの衛生管理体制を確認することが非常に大切になります。
これらの対策は、あなたとパートナーの健康を守るだけでなく、安心して治療に臨み、成功率を高めるための大切な一歩です。少しでも不安な点があれば、遠慮なく担当医に相談しましょう。