介護DXで何が変わる?「介護情報基盤」が家族の負担を減らす理由

 

「親が急に入院することになったけれど、普段飲んでいる薬がわからない」「別の施設に移るたびに、同じ説明を何度も繰り返すのが大変」……。

こうした介護現場での「情報の分断」は、家族にとって大きな精神的・肉体的負担となってきました。

しかし、2026年(令和8年)4月、日本の介護は大きな転換点を迎えます。医療と介護の情報をオンラインで一元管理する**「介護情報基盤」**の本格運用が順次スタートするからです。

今回は、この「介護DX(デジタルトランスフォーメーション)」の目玉である新制度が、私たちの介護生活をどのように変え、負担をどう減らしてくれるのかを詳しく解説します。


1. 「介護情報基盤」とは?一言でいうと「介護版・電子カルテ」

これまで、親の「要介護認定の情報」や「過去のケアプラン」「リハビリの記録(LIFE情報)」などは、市区町村や個別の事業所にバラバラに保管されていました。

2026年から始まる新制度では、これらが国の共通プラットフォーム上にデジタルデータとして集約されます。

  • 情報の見える化: 適切な同意があれば、医療機関・介護事業所・ケアマネジャー、そして家族の間で、リアルタイムに必要な情報を共有できるようになります。

  • 全国医療情報プラットフォームとの連携: すでに進んでいるマイナンバーカードを活用した医療情報の共有と合流し、医療と介護が「地続き」でつながります。


2. 家族の負担を減らす「3つの大きな変化」

このシステムが稼働することで、家族が直面してきた「名もなき介護の事務作業」が劇的に軽減されます。

① 「同じ説明」の繰り返しがなくなる

急な入院や転居で新しいスタッフに会うたび、「持病は?」「アレルギーは?」「以前はどんなリハビリをしていた?」と聞かれるストレス。2026年からは、新しい事業所がシステム上で過去の情報を参照できるため、家族の口頭説明の手間が大幅に減ります。

② 証書関連の「持ち歩き・提出」が不要に

現在は「介護保険証」や「負担割合証」の紙の原本を持参し、コピーを提出する必要があります。今後はマイナンバーカード一本で資格確認が完了するため、カバンの中から証書を探したり、紛失を心配したりする必要がなくなります。

③ 手続きの待ち時間が短縮される

これまで、医療機関から市町村へ送られる「主治医意見書」などは郵送が主流でした。これがデジタル送信されることで、要介護認定の結果が出るまでのスピードが上がり、必要なサービスをより早く使い始めることが可能になります。


3. 知っておきたい利用のルールと注意点

便利なシステムですが、利用にあたっては以下のポイントを理解しておく必要があります。

  • 本人の同意が原則: 介護情報を共有するためには、原則として本人の同意が必要です(一度包括的に同意すれば、都度の確認は不要になる仕組みも検討されています)。

  • 自治体によって開始時期が異なる: 2026年4月から一斉に全国で始まるわけではなく、準備が整った市区町村から順次スタートします。お住まいの地域がいつ対応するか、広報などをチェックしておきましょう。

  • セキュリティの安心感: 国の厳格なガイドラインに沿ったシステムで管理されるため、個人情報の漏洩リスクには最大限の対策が講じられます。


4. 介護DXを賢く活用するための準備

制度の開始に向けて、家族ができる準備はシンプルです。

  1. マイナンバーカードの作成: 介護情報の参照や手続きの鍵となります。

  2. マイナポータルの登録: 自分や親の情報をスマホから確認できるようにしておくと、将来的に非常に便利です。


まとめ:デジタルが「人」の時間を創り出す

「介護情報基盤」の導入は、単なる効率化ではありません。これまで事務作業や情報の聞き取りに割かれていたケアマネジャーやヘルパーの時間を、**「目の前の高齢者と向き合う時間」**へと戻すための改革です。

介護は「頑張って情報を伝えるもの」から「専門家が情報を共有し、チームで見守るもの」へと進化します。この新しい仕組みを味方につけて、家族の負担を少しでも軽くしていきましょう。



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