雇用保険の加入手続きを忘れたらどうなる?遡及適用のルールと「遅延理由書」の書き方


「新しく雇った従業員の雇用保険、手続きするのを忘れていた…」

「入社から数ヶ月経ってしまったけれど、今からでも間に合うの?」

「ハローワークに怒られたり、罰則を受けたりするのではないか不安…」

人事労務の現場では、日々の業務に追われて**「雇用保険被保険者資格取得届」**の提出が漏れてしまうことがあります。本来は「入社の翌月10日まで」が期限ですが、万が一過ぎてしまった場合、どのように対処すべきか分からず頭を抱えている方も多いはずです。

結論から申し上げますと、手続きが遅れても**「遡及(そきゅう)加入」**という仕組みを使って解決できます。ただし、遅れた期間や理由によっては追加の書類提出が必要です。

この記事では、雇用保険の加入を忘れた際のリスクや、遡って加入するためのルール、そしてハローワークに提出する「遅延理由書」の具体的な書き方を分かりやすく解説します。


雇用保険の加入漏れは「遡及適用」で解決できる

雇用保険の手続きを忘れていたことに気づいたら、まずは落ち着いて「遡及適用(そきゅうてきよう)」の手続きを行いましょう。これは、過去に遡って雇用保険の資格を取得させる手続きのことです。

1. 原則として「2年前」まで遡れる

雇用保険法により、保険料を給与から控除していた実態などがあれば、最大で2年前まで遡って加入させることが可能です。

2. 2年を超える「特例」があるケース

もし、2年以上前から雇用保険料を給与から天引きしていたことが給与明細などで証明できる場合に限り、特例として2年を超えて(最大で時効にかからない範囲まで)遡及できる制度もあります。


手続きが遅れた場合に必要となる「遅延理由書」とは?

ハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する際、期限(翌月10日)を大幅に過ぎていると、追加で**「遅延理由書」**の提出を求められることが一般的です。

これは「なぜ期限までに手続きができなかったのか」を説明する書類です。特に決まったフォーマットがない場合も多いですが、以下の内容を網羅する必要があります。

遅延理由書に記載すべき主な項目

  • 宛先: 公共職業安定所長 殿

  • 作成日: 書類を提出する日付

  • 事業主情報: 所在地、事業所名、代表者名、電話番号

  • 対象者情報: 氏名、生年月日、採用年月日

  • 遅延の理由: 正直かつ具体的に記載します(例:担当者の交代による事務引き継ぎの漏れ、加入対象者の確認不足など)。

  • 今後の対策: 二度と遅延を起こさないための改善策を添えます。

例文:よくある理由の書き方

「当該従業員の採用時において、事務担当者の不慣れにより雇用保険の加入要件の確認を失念しておりました。今後はチェックリストを導入し、適正かつ迅速な届出を徹底いたします。」


手続きが遅れることによる「3つの大きなリスク」

「後で遡ればいいや」と放置するのは危険です。手続きの遅延には、会社にとって無視できないリスクが伴います。

① 従業員が給付を受けられない

もし手続き中に従業員が退職したり、育児休業に入ろうとしたりした場合、保険の加入期間が足りないと判定され、失業手当や育児休業給付金が受給できない恐れがあります。これは大きなトラブルや損害賠償に発展しかねません。

② 助成金の受給資格を失う

キャリアアップ助成金など、多くの厚生労働省系助成金は「適切な労務管理(雇用保険への正当な加入)」が受給の前提条件です。加入漏れが発覚すると、助成金が不支給になったり、過去の受給分の返還を求められたりすることがあります。

③ 罰則の適用

悪質な未加入や放置とみなされた場合、雇用保険法に基づき「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が科せられる可能性もゼロではありません。


遡及加入の手続きに必要な添付書類

遅れて届け出る場合、ハローワークから「本当にその日に採用されたのか」「労働実態はどうだったのか」を確認するための証拠書類を求められます。

  • 労働者名簿

  • 雇用契約書(または労働条件通知書)

  • 賃金台帳(採用時から現在までのもの)

  • 出勤簿(またはタイムカード)

これらの書類を揃えて、資格取得届および遅延理由書と一緒に提出します。


二度と忘れないための「効率化」のヒント

手続きの漏れを防ぐ最も有効な手段は、属人的な管理をやめることです。

  • 入社時チェックリストの作成: 採用時に必要な手続き(雇用保険、社会保険、住民税など)をリスト化し、誰でも確認できるようにします。

  • クラウド労務管理システムの導入: 従業員情報を入力するだけで、自動的に「いつまでに何をすべきか」を通知してくれるシステムを活用しましょう。そのまま電子申請まで行えるため、ハローワークに行く手間も省けます。


まとめ:気づいた時が「最短」の提出タイミング

雇用保険の加入手続きを忘れていたことに気づいたら、すぐに行動することが大切です。

  • 2年前までなら遡及加入が可能

  • 「遅延理由書」と裏付け資料(賃金台帳など)を準備する

  • 放置すると助成金の不支給や損害賠償のリスクがある

誠実に対応すれば、ハローワークも手続きを受け付けてくれます。まずは手元の資料を確認し、速やかに管轄のハローワークへ相談、または電子申請を行いましょう。

正しい労務管理は、会社を守り、従業員の安心を支える基盤です。今回の経験を機に、より強固な事務体制を整えていきましょう。


雇用保険被保険者資格取得届の書き方完全ガイド!初めての担当者でも迷わない手続きのコツ



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