退職後の健康保険、どっちが安い?「任意継続」と「国民健康保険」の損得ラインを徹底比較
長年勤めた会社を退職した際、避けて通れないのが「健康保険の切り替え」です。これまでは会社が保険料を半分負担してくれていましたが、退職後は自分で手続きを行い、全額を負担しなければなりません。
多くの方が直面する選択肢が、**「任意継続(元の会社の保険を続ける)」か、「国民健康保険(自治体の保険に入る)」**かという二択です。どちらを選ぶかによって、年間で数万円、時には10万円以上の差が出ることもあります。
この記事では、損をしないための「損得ライン」の見極め方と、それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく解説します。
1. そもそも「任意継続」と「国民健康保険」とは?
比較を始める前に、それぞれの制度の特徴を整理しておきましょう。
任意継続(会社の健康保険を継続)
退職後、最長2年間、以前加入していた健康保険組合や協会けんぽにそのまま加入し続ける制度です。
保険料: 在職時の「標準報酬月額」に基づき、会社負担分も合わせた**「全額自己負担」**となります。
上限額: 保険組合ごとに「上限」が設定されており、現役時代の年収が非常に高くても、一定以上の保険料にはなりません。
扶養: 家族を扶養に入れることができ、扶養家族が増えても保険料は変わりません。
国民健康保険(お住まいの自治体の保険)
お住まいの市区町村が運営する保険制度です。
保険料: 前年の所得、世帯人数などをもとに計算されます。
上限額: 自治体ごとに決まっていますが、近年は引き上げ傾向にあります。
扶養: 「扶養」という概念がありません。 赤ちゃんから高齢者まで、加入者一人ひとりに保険料(均等割)がかかります。
2. ズバリ「損得ライン」はどこ?年収と家族構成がカギ
どちらが安くなるかは、主に「退職時の年収(所得)」と「扶養家族の有無」で決まります。
年収による判断の目安
一般的に、年収が400万円〜500万円を超えると「任意継続」の方が安くなる可能性が高まります。
年収が低い場合(目安:350万円以下): 所得に応じて計算される「国民健康保険」の方が、任意継続(全額自己負担)よりも安くなるケースが多いです。
年収が高い場合(目安:500万円以上): 任意継続には保険料の上限(標準報酬月額のキャップ)があるため、高所得者ほど任意継続の方が割安になります。
家族構成による判断の目安
扶養家族がいる場合: 迷わず「任意継続」を検討しましょう。国保は人数分だけ保険料が加算されますが、任意継続なら家族を何人扶養に入れても保険料は1人分で済むため、圧倒的に有利です。
単身(一人暮らし)の場合: 所得と自治体の料率を比較して慎重に選ぶ必要があります。
3. 知っておきたい最新の変更点
制度の運用に一部変更が出ています。比較の際に注意すべきポイントです。
国民健康保険の上限額引き上げ
国民健康保険の賦課限度額(年間の上限)が、昨今の医療費増大に伴い引き上げられています。高所得世帯の場合、国保を選ぶと年間110万円程度の負担になる可能性があり、任意継続の上限額と比較すると任意継続の方が安く済むケースが増えています。
任意継続の「標準報酬月額」の上限
協会けんぽの場合、任意継続の保険料計算に使う標準報酬月額の上限は「32万円」に据え置かれる傾向にあります(※加入する組合により異なります)。月収が32万円を大きく超えていた人は、任意継続を選ぶことで、実際の所得よりも低い基準で保険料が計算されるため、大きな節約になります。
4. 失敗しないための「3ステップ」比較法
手続きの期限は、退職から20日以内(任意継続の場合)と短いため、事前の確認が不可欠です。
任意継続の保険料を確認する: 現在の健康保険組合や協会けんぽのホームページで、自分の標準報酬月額に基づいた保険料(全額自己負担分)を調べます。
国民健康保険の概算を出す: 市役所の窓口や自治体のホームページにあるシミュレーターを使い、前年の所得をもとにした保険料を計算します。
2年間のトータルで考える: 国保は2年目に所得が下がれば安くなりますが、任意継続は2年間一定です。1年目だけでなく、2年間の総額でどちらが得かを見極めましょう。
まとめ:自分に合った選択で負担を最小限に
「任意継続」と「国民健康保険」には、それぞれ一長一短があります。
「家族が多い」「現役時代の給与が高かった」なら任意継続
「単身」「退職後の収入が大幅に減る」「年収がそれほど高くなかった」なら国民健康保険
まずは、お住まいの自治体の窓口や、会社の健保担当者に問い合わせて具体的な見積もりを取ることから始めてください。期限を過ぎてしまうと、自動的に国民健康保険への加入となり、選択肢がなくなってしまうため注意が必要です。
賢い選択をして、退職後の新しい生活を安心してスタートさせましょう。